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口唇裂・口蓋裂による顔面変形の治療

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口唇裂・口蓋裂による顔面変形の治療

1. 口唇裂・口蓋裂について

口唇裂・口蓋裂は、数多くある生まれつきの顔の異常の中で最も頻度の多いものです。症状は、口唇(くちびる)、顎堤(はぐき)、口蓋(口の中の上あご部分)に、片側あるは両側に割れ目の残ったまま生まれてくるものです。出生の頻度は、日本では約400~500出生に一人程度と言われています。 人種によっての出生頻度にもバラつきがあることが知られていて、中でも、日本人を含む東洋人は最も頻度が高いと言われています。400~500人に一人の割合で口唇裂・口蓋裂の方がいらしゃることになるわけですが、きちんとした形成外科・歯科矯正治療を受けられれば、成人したときには、ほとんどの方には口唇裂・口蓋裂だったと気が付かれていない程度まで回復されて、普通の社会生活を営まれておりますので、現在、口唇裂・口蓋裂の赤ちゃんや治療中の方の将来には何の心配もありません。

発生原因ですが、いろんな研究がなされておりますが、ほとんどの場合、これといった決定的な原因は不明で、少なくとも一つの原因ではなく、多数の因子・原因が関与していることが知られています。 胎児の口唇は胎生7週ごろ、口蓋は胎生12週頃に作られますが、この時期の形成過程が何らかの原因でうまく行われなかったと考えられます。また、遺伝的影響がどれくらい関係しているかについても、不明でありますし、この病気を起こす遺伝子が特定されているわけでもありませんので、遺伝疾患に分類されてはおりません。

2.口唇裂・口蓋裂の分類

口唇裂には形、幅、長さなどに様々な程度のものがあります。「裂」と呼ばれる口唇の割れ目の長さによって、「裂」が口唇のみにとどまっている「不全唇裂」と鼻の穴の中まで裂ある「完全唇裂」とに大きく二分されま。

また「裂」が両側にあるか、片側のみにあるかによる分類もされます。さらに、裂が口唇のみに存在する「口唇単独裂」、歯ぐき(歯槽堤)まで存在する「唇顎裂」、また上あごの裏側(口蓋)にまで存在する「唇顎口蓋裂」などがあります。

(1)片側完全唇裂と顎裂、口蓋裂

(2)両側完全唇裂と顎裂、口蓋裂

(3)片側唇顎裂

(4)両側唇顎裂

また、「裂」があることで、鼻の形も大きく影響を受けます。

基本的には、これらの分類に基づいて、具体的な治療時期と治療方法が決まります。

 

3.治療方法

手術治療は、生まれてから20歳ぐらいの成人までかけて、成長に応じて生じてくる顔面変形に対して、数回必要になります。ここでご紹介する治療方法は、私たちの長年培ってきた長期成績に基づく方法です治療は歯科矯正治療も含め、全て健康保険の対象となりますし、各地方自治体の乳幼児医療補助や生まれつきの病気お子さんに適用される育成医療制度を用いると治療費に関する心配は不要となります。

(1)生まれてから初回手術(口唇裂閉鎖術:生後3カ月ぐらい)まで

まず、生後3カ月頃に、口唇裂を閉じる初回手術(口唇裂閉鎖術)による、見た目の改善を行います。この手術に向けて、生まれて早期から準備を開始します。

通常、生まれてすぐの赤ちゃんを小児科または産婦人科の先生が診察し、形成外科に紹介されます。そこで、口唇裂・口蓋裂の程度を診察して、大まかな治療方針をお話いたします。赤ちゃんは、口唇裂・口蓋裂がありますので、その程度に応じて母乳・ミルクの飲みが難しいですので、うまく飲めるような方法をお教えします。口唇裂・口蓋裂があっても程度の軽い場合は、特別な方法でなくてもうまく飲める赤ちゃんがかなりいます。うまく飲めない場合は、特別な哺乳瓶口を使えばうまく飲めるようになりまし、それでも口蓋裂が広くてうまく飲めない場合は、口蓋裂を閉鎖する「ホッツ床」(Hotz)と言われるものを装着します。さらに、上あごの裂の形と鼻の形が悪い場合は、ナムプレート(NAM)を用いる場合があります。

 

(2)初回口唇閉鎖術(生後3カ月以降)

心臓などの他の生まれつきの異常がなければ、生後3ヶ月以降で体重6Kg以上あれば、初回口唇閉鎖術を行います。入院して全身麻酔下で安全に手術を行います。

片側口唇裂の場合は、ミラード法+小三角弁法という方法で口唇裂を閉鎖します。両側口唇裂の場合は、マリケン法という方法で閉鎖します。手術時間は、1時間半から2時間ぐらいです。

退院は、手術後ミルクが十分に取れるようになってからですので、術後2、3日目以降になります。

(3)口蓋裂閉鎖術(生後1年ぐらい)

口蓋裂がある場合は、生後1年ぐらいで口蓋裂閉鎖術を行います。

口蓋裂閉鎖術を行います。入院して全身麻酔下で安全に手術を行います。

手術方法は、口蓋裂の形・大きさにもよりますが、ファーラー(Furlow)法やプッシュバック(Push Back)法を用います。手術時間は、1時間半から2時間ぐらいです。

退院は、手術後に母乳やミルクが十分に取れるようになってからですので、術後2、3日目以降になります。

 

口蓋閉鎖術が終わると、しばらくは成長を見守ります。

鼻や口唇の形が目立ってくれば、小学校に上がる前の5~6歳で行うか、それ以降は、変形の程度と年齢に応じて、ご家族やご本人と相談しながら手術時期を決定します。

小学校上がる前ぐらいに、一度、専門の矯正歯科の先生の診察を受けていただき歯並びのチェック、矯正治療の開始時期などを相談していただきます。

 

(4)顎裂骨移植術(混合歯列期:8~10歳頃)

歯槽の割れ(顎堤の割れ:顎裂)がある場合は、歯並びを良くして上あごの発達を促すために、歯が入れ替わる頃(混合歯列期:8~10歳)に、割れた部分に腰の骨(腸骨海綿骨)を移植する手術を行います。この手術は、入院して全身麻酔下で安全に行います。手術時間は、1時間半ぐらいです。退院は、骨を移植した口の中の傷が落ち着いた術後3日目以降になります。手術後2-3週間程度は、骨を移植した部分に力がかからないような軟らかい食事を召し上がって頂きます。

 

顎裂骨移植後は、歯並びの治療は歯科矯正の先生に引き続きしていただきます。形成外科では、顔の成長とともに上あごの成長のバランスや、鼻、口唇の形・バランスを診ていきます。

 

(5)第二次性徴期終盤(17歳以降)

A.上あごの成長が悪い場合

特に、上あごの成長が悪く、受け口・反対咬合が生じてくる場合がありますので、10歳から20歳ぐらいまでの間の成長期での定期的な診察は欠かせません。もし、上あごの成長が悪く、受け口・反対咬合が残ってしまう場合には、顔面骨の成長が終了した17~20歳ぐらいで上あごの骨を前に出し、下あごの骨を下げて、かみ合わせと顔の形を整える外科矯正手術が必要になります。また、歯科矯正治療をあまり行っていない場合でも、できるだけ短期間で顔の形を改善する手術先行方法による外科矯正治療を行っております。

具体的な治療成績は、こちらの症例ページをご覧ください。

 

B.上あごの成長に問題がない場合

最終的な仕上げとして、鼻の形や上唇の手術後の目立つ傷や、凹み、変形などに対して主に見た目の改善を重視した修正手術を行います。

顔の成長は、生まれてから17~20歳ぐらいまでかけてゆっくりと時間がかかります。従いまして。17~20歳までの顔の手術は、顔の成長を障害しないように十分配慮した手術計画、手術方法を慎重に選択いたします。17~20歳以降の顔の手術では、できるだけ口唇裂・口蓋裂とはわからないような顔にする整容性を高める手術方法を選択いたします。

 

以上の治療方法は、私たちの治療方針です。全国的に多少の手術時期、手術方法の違いがありますが、おおむねの治療方針には変わりがないと思われます。

特に、私たちは、15歳以降に上あごの成長が悪くなってはっきりしてくる受け口・反対咬合に対する外科矯正治療、および最終的な鼻の形や上唇の傷あとの治療が成人後の顔に大きな影響を与えると考えており、これらの治療に大変力を入れております。

私たち以外の施設で、すでに治療を受けられてきてさらに顔の改善を希望される方でも、お悩みを伺い治療の相談をさせていただいております。

具体的な治療成績は、こちらの症例ページをご覧ください。


お問い合わせは、形成外科・美容外科 外来受付まで TEL 03-5343-5611 午前9:00~16:00(日曜・祝祭日・年末年始は除く)

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